社会福祉法人経営分析のための財務指標と都内平均値
今、社会福祉法人では、理事会・評議員会に向けて大忙しではないでしょうか。
さて、社会福祉法人制度改革の中で、経営組織のガバナンスの強化と、事業運営の透明性の向上が求められるようになりました。
各法人は、財務状況について、単に規律に反した不正なお金の処理がされていないかどうかをチェックするだけでは足りず、法人の運営が健全に行われているかと言えるかどうかをチェックし、今後の運営に役立てていくことが大切です。
東京都福祉保健局は、「社会福祉法人財務分析計算シート」を作成し、誰でもダウンロードができるようになっています。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/jigyosha/2122zaimu.html
このシートに、法人単位又は施設(拠点区分)単位の決算書上の数値を入力していくと、財務状態を分析する上で重要な13の財務指標が算出されます。
13の財務指標とは、以下の通りです。各指標の大まかな意味も付記しましたので、参考にしてください。
(1)〈短期安定性〉流動比率
すぐに返済をしなければいけない流動負債に対して、すぐに現金に代えることができる流動資産が何倍あるか。
(2)〈長期安定性〉純資産比率
法人の財産を形成した財源のうち、自己資本がどのくらいの割合を占めているか。
(3)〈長期安定性〉固定長期適合率
法人の固定資産を確保するための財源が、返済が不要なお金、または、長期に亘って返済すればよいお金で賄われているか。
(4)〈費用合理性〉人件費率+委託比率
人件費と委託費が、すべての収益の中のどの程度の割合を占めているか。
(5)〈費用合理性〉労働分配率
法人の限界利益に対する人件費の占める割合。人件費や福利厚生費が、法人が受け取る利益に照らして払える範囲の額になっているか。
(6)〈収益性〉経常増減差額率
経常増減差額とは、一般企業の経常利益にあたるもの。サービス活動による収益の中の何%を、最終的に確保できたか。
(7)〈借入の割合〉サービス活動収益対運営資金借入比率
正味の収益に対する、運転資金としての借入金の占める割合。日常の事業運営に要する経費の資金繰りに関する借金依存度。
(8)〈資金繰り〉借入金償還余裕率
事業活動で生み出す利益の中から、安定的に借入金の返済をできているかどうか。
(9)〈資金繰り〉債務償還年数
その年の事業活動収支差額をすべて返済に回したら、借入金を何年で返済することができるか。
(10)〈資金繰り〉事業活動資金収支差額率
事業活動資金収支は、一般企業でいうキャッシュフロー計算書に近いもので、実際の現金の増減を表すもの。実際に現金として得た収益のうちの何割を現金として残せたのか。
(11)〈費用合理性〉事業費比率
一般企業でいう原価率に近いもので、サービス活動収益に対する給食(材料)費や介護用品費など、利用者へのサービス提供に直接要する経費が、すべての収益の中で占める割合。
(12)〈費用合理性〉事務費比率
一般企業でいう販管費(人件費を除く)が、すべての収益の中で占める割合。
(13)〈資産合理性〉固定資産老朽化率
これまでにどのくらい施設・設備の減価償却が進んできたか。老朽化状況を示す指標。
また、先ほどのHPでは、都内の社会福祉法人の財務分析結果の平均値が、事業区分別、収益規模別に整理されていますので、併せて、参考にしてください。
財務分析を行う上では、単に平均的な数値より高い(低い)から良い(悪い)というだけの評価で終わらせてはいけません。
なぜ、そのような数値になっているのか、背景事情を考察することこそが重要です。
考察の際のポイントは、何らかの一時的な事情によるものなのか、それとも中長期的に継続する事情によるものなのかといった、背景事情を見極めることがまずは大切と言えます。
こうした要因を分析した上で、その内容に応じた健全化対策を検討する必要があります。