下町の閑静な住宅街に、その借家は、並んで建っていました。
住人達は、お互いに気遣い合い、支え合いながら、穏やかな生活を送っていました。年齢を重ねても、ご近所さんがいるから安心して生きていける。住人達は、そう信じていました。
ところが、突然、住人達のもとに、「A社」という聞いたことも無い会社から、「賃貸人変更通知書」が送られてきました。今までの大家さんが、借家の建物と敷地をA社に売って、A社が新しい大家になったというのです。
さらに、その直後、A社の社員が住人達の家を個別に訪問しては、早期の立ち退きを求めるようになりました。
住人達はパニックになり、弁護士に相談しました。
賃貸物件の売買により賃貸人が変わっても、新賃貸人は、旧賃貸人の契約上の地位をそのまま引き継ぐので、賃貸人が変わったからといって、立ち退かなければいけないということにはなりません。
また、「借地借家法」で、賃貸人が、賃貸借契約を解約したり更新を拒絶したりできるのは、『正当な事由』がある場合に限られています。
さらに、正当事由をもって解約を申し入れても、申し入れから六カ月が経過するまで契約は終了しません。
更新拒絶の場合も、正当事由をもった更新拒絶の通知を、契約期間満了の一年前から六カ月前までの間にしなければなりません。
弁護士は、急ぎA社に対し、正当事由がない明渡しは認められないこと、今後は弁護士が交渉窓口になることを通告しました。
弁護士の介入により、住人たちは落ち着きを取り戻し、将来を考える時間ができました。
弁護士は、建物と敷地の買取を希望する住人のために、買取条件をなるべくよいものにするよう時間をかけて交渉しました。
また、高齢のため買取は希望しないがずっと住み続けることを望む住人の為に、一代限りで終身の建物使用を認める和解を成立させました。
さらに、移転を選択した住人のためには、適正な金銭的補償と猶予期間を取り付けました。
住居の問題は、生活や人生を左右する、大きな問題です。
住人を守る法律を活用し、落ち着いて将来を考えられるといいですね。
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