家事
特別縁故者への財産分与申し立て
二人が恋に落ちたのは、戦後間もない、まだ学生の頃でした。
幼馴染だった彼は、肺結核で長年転地療養をする身でした。彼女は、そんな彼に寄り添い、献身的な看護を続けました。
いつしか二人は、互いに永遠の愛を誓い合う恋人同士となったのです。
親戚も二人に結婚を勧めましたが、彼は「いつ死ぬか分からない自分が、結婚して、かえって彼女に迷惑をかけるわけにはいかない」と考えていました。
結局、二人は、婚姻することも同居することもありませんでした。
しかし、二人は、それ以後も、ずっとずっと寄り添いあって生きてきました。彼女は、毎日彼の部屋を訪れ、朝御飯を作り、買い物をし、夕御飯も作りました。
彼は78歳で亡くなりました。
亡くなった後、彼が、数年前に亡くなったお母さんの遺産をほとんど使わずに貯めていたことが分かりました。
弁護士は、裁判所に、彼女を「特別縁故者」と認めて彼の遺産をすべて彼女に分与するよう申し立てました。
裁判では、彼と彼女の深い愛情、それに裏付けられた彼女の献身的な行為から、彼女は彼の事実上の妻であったと主張しました。
裁判所の判断は、「すべての遺産を彼女に分与する」という、事実上、彼女を内縁の妻と認めるものでした。
本件のポイント
同居の事実がない事例で、裁判所が内縁関係を認めたことは、異例のことと言えます。
戦後50年にわたる二人の純愛が、裁判所を動かしたのでした。