代襲相続人の遺留分侵害額請求に対して遺言者が生前に被代襲者に対して生前贈与を行っていた事実を主張して減額を勝ち取った事例
Xさんの父Aさんが亡くなりましたが、Aさんは、Xさんにすべての財産を相続させる遺言を残していました。
Aさんの死後、Xさんの亡くなった兄Yさんの息子Zさん(Xさんの甥)から、Yさんの代襲相続人として、遺留分の請求がありました。
しかし、Xさんは、Aさんから、「Yには家を建てるときに援助してあげた」と聞かされていたのに、Zさんの請求通りに払うのはおかしいのではないかと考えて、弁護士に相談することにしました。
代襲が発生している相続の事案で、被代襲者に対して生前贈与した事情があった場合に、被代襲者に対しても主張できるのかという点については、民法には特に規定がありません。
しかし、被代襲者に生前贈与した事実が確かにあるのに、まったく考慮されないというのは、不公平な感は否めません。そこで、弁護士は、同種の事例の裁判例を探しました。
そうしたところ、ある裁判例で、遺留分減殺請求において被代襲者が生前に受けた特別受益が、代襲相続人にとっても特別受益に当たると認めた事例(平成29年5月18日福岡高裁判決)を見つけました。
この判例では、裁判所は、特別受益の持戻しや代襲相続の制度趣旨から、被代襲者(相談事例ではYさん)が生存していれば受けることができなかった利益を、被代襲者(相談事例ではZさん)に対して与える必要はないと述べました。
そして、被代襲者に特別受益がある場合には、その子等である代襲相続人もその利益を享受しているのが通常であることなどを考慮して、被代襲者についての特別受益は、その後、被代襲者の死亡によって代襲相続人となった者との関係でも特別受益に当たると判断したのです。
弁護士は、まさにXさんに事案にも、この裁判例の考え方が当てはまるのではないかと考えました。
そこで、Xさんに対して、Aさんがお金を支払ったことを裏付ける資料を探してもらったところ、Yさんの自宅購入の時に払った頭金の領収書が見つかり、それと同じ時期にAさんが多額のお金を銀行から引き出していたことも分かりました。
弁護士は、裁判例の存在とこうした資料を示して、Zさんから請求されていた金額を減額させることに成功しました。
本件のポイント
この事案で、弁護士は、Xさんの相談例と同じような事案についてXさんに有利な判断を示した裁判例を見つけると共に、どのような資料が裏付けになるか証拠の見つけ方を指導し、相手の説得に成功しました。
相続が発生し、相手方との対応に困っていることがございましたら、まずは一度ご相談いただければと思います。